福田社長

「おまけメディア」としてのスタート

社長の企業訪問
河端河端

モバイルコンテンツの市場を牽引して来たともいえる御社ですが この5年間のケータイコンテンツの変化をどのように捉えてらっしゃいますか?

福田社長福田氏

「ケータイ」というメディアは5年前は大人のビジネスマンがわからないメディアだった。 位置づけとしては、「おまけメディア」あるいは「プロモーションメディア」だと思われていたと思います。 そんな中で僕は「ケータイがコンテンツを発信する1つの独立したメディアとして成り立つのではないか」と考えました。
良いか悪いか別として、昨今は多メディア化が進んでおり、 必ずしもハリウッド映画だけがエンターテインメントの中心ではなく、 邦画の興行収入が洋画を逆転するような現象が起きています。 ネットでもYOUTUBEもテレビを陵駕する勢いで市民権を得ている。 それくらいメディアが多様化している中で、 ソニーがグループ戦略の一つとして、ケータイ向けの娯楽コンテンツ提供を開始すべきではないかと考えました。

福田社長福田氏

でも、ソニー・ピクチャーズの部門で携帯ビジネスを行っていると、 どうしてもワンソース・マルチユースというポジションの中で活動が制約されてしまう。 たとえば、「スパイダーマン」を劇場でやってその後数ヵ月後にDVDで販売して、 流れの中で補足的にケータイでも配信というような位置づけだったので、 ケータイメディアとしての自立性を考える余地がありませんでした。 あくまで、大きなメディア戦略の一つとしてやっていたんですよ。

ケータイ発のオリジナルなコンテンツの提供を目指して

福田社長
福田社長福田氏

でもここ数年は、(出版社の発表する文学作品と比較して)稚拙だという意見はあるにせよ、 ケータイ小説のようにケータイからオリジナル作品が発信されるようになった。 それがヒットして逆に書籍化されたり、映画化されたりという事が起こって、 確実にケータイのメディア化が開花してきました。このケータイ小説ブームが、 大きなきっかけになりました。 ケータイオリジナルのコンテンツが市民権を得てきたことで、 自分の予想はあながち的外れではなかったのではないかと思っています。

大ヒットアニメ「The World of GOLDEN EGGS」

「The World of GOLDEN EGGS」
The World of GOLDEN EGGS
(C)PLUS heads inc. All Rights Reserved.

河端河端

元々はソニー・ピクチャーズの一部門として始めたものが、 会社となってどんどん売上を伸ばされていらっしゃいますが、 御社の今一番の人気のコンテンツというのは?

福田社長福田氏

一番今売れているのは、「The World of GOLDEN EGGS 」というアニメです。
僕がこだわっているのは「ケータイファースト」というキーワードで、 でもケータイだけで終わるんじゃなくて、 ケータイ世代に響いたものは必ずその上の層や下の層にも浸透してくると考えています。
「The World of GOLDEN EGGS」は、今でこそ若者の間で知らない人はいないですが、 実は始めたのは4年以上前です。ブレイクまでに3年半を要しました。 小栗旬さんや、鈴木杏さんが面白いと言ってくれたりという布石があって、 2年目にDVDがワーナーから発売されて、当社のケータイコンテンツの方もだんだん火がついてきた。 最近では、日産、JTB、ローソンといった大企業とのタイアップですっかり市民権を得ています。

福田社長
福田社長福田氏

SONY創業者である盛田昭夫さんがウォークマンを作ったときに、 「どうやって製品のコンセプトを思いついたのか?」と尋ねたら、 盛田さんは「私にとって新商品開発にマーケティングリサーチは要らない。 歩きながら音楽を聴きたい、 という純粋な欲求から始めたらウォークマンができた」と仰ったんですね。 僕はずっとその言葉がインスピレーションになっていて、 「The World of GOLDEN EGGS 」というアニメも「何で女性が見るアニメがないのか」という想定から入って、 マーケティング開発を行いました。
必ずしもエンターテイメントコンテンツというのは、創造的な発想ばかりではなくて、 今はアキバ系が流行っているから、萌え系、ホラーが流行っているからという仕事のやり方もあると思うんです。 でも、僕は本当にチャレンジングな仕事っていうのは、流行現象の追随ではなく、 自分が欲しい、ターゲットの方々が欲しいというイメージの仮説を立証するやり方だと思っています。

「きの山さん」
きの山さん
(C)2009 MEIJI SEIKA KAISHA, LTD.

福田社長福田氏

「きの山さん」という明治製菓さんとタイアップしているキャラクターも好評です。 これは販売チャネルへの新しい試みだと考えています。 いままでのアニメキャラクターを売ろうと思ったら、例えば子供が見そうなテレビ時間帯をおさえ、 アニメ番組を提供し玩具や関連グッズ、服飾を売りだすという導線しかなかったのです。 でも現在では、コンビニやケータイそのものが娯楽の可処分時間を奪うようなマーケットチャネルになり、 強力なメディアになっている時代です。そんな風に人々の楽しみ方が多様になってきたときに、 「コンビニで売っているお菓子からキャラクターが出てもいいじゃないか。」と考えたんですね。
比較的今までもお菓子というのは、不二家「ペコちゃん」とか人気キャラクターを生み出してきたのですが、 最近、まったくゼロから成功したキャラクターは少なかったので、「きの山さん」は、大成功といえますね。 昨年の木下優樹菜さんが”きの山さん”と共演したCMも好評で、 ケータイサイトでもコミックやデコメが大人気です。 今ではイトーヨーカ堂や、セブンイレブンなどでも「きの山さん」がプレミアム商品として人気です。

「ひとりかくれんぼ」
ひとりかくれんぼ
(C) eri kamijo

福田社長福田氏

ケータイ小説では、「ひとりかくれんぼ」というTAKAKO(※)さんのホラー小説が人気あります。
配信を開始して30日を待たずに100万DLを突破して、竹書房から7月ごろに書籍化か決定しています。 スプラッターものではなく、本当に心理的に怖いいわゆるJホラー。 「四谷怪談の昔からある人間の情念と背景があるようなストーリーを書いてください」 という当社からの依頼で始まりました。 我々は「脱ケータイ小説」を目指しています。 従来ケータイ小説のテーマになってきた、難病や、恋愛ばかりのものではなくて、 枠を広げる試みという意味です。今後はミステリー、アドベンチャー、ファンタジー等にも挑戦していきます。 それこそ「ハリー・ポッター」のような健全なファンタジーを日本のケータイ小説として出したいんです。 それをやってこそ、ケータイ小説は市民権を得るのだと思います。

※TAKAKO
人気ケータイ小説家、マンガ家。
代表作は「ガールズウォーカー」内「マンガウォーカー」に掲載中の「OUTSIDE」など。